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    身柄解放(保釈・逮捕・勾留)50問50答Q&A

逮捕勾留QAは、どういう場合に逮捕勾留されるのか、どうしたら身柄の解放をもらえるかを、実務の観点から詳細に述べています。逮捕されそうな方、身内が逮捕された方は、参考にしてください。

最初に質問と簡潔な答えをまとめて記載してありますが、詳細は、各QAの解説をお読みください。

 Q1 保釈されるための要件はどのようなものですか?
 Q2 権利保釈(刑事訴訟法89条)に当たらない場合には、保釈は認められませんか?
 Q3  保釈はなかなか認められないと聞きましたが。
 Q4  権利保釈で、保釈請求が却下される最大の理由はなんですか?
 Q5  「罪証隠滅のおそれ」とは、どのように判断されるのですか?
 Q6  罪証隠滅の対象には、量刑事情も含みますか?  
 Q7   覚せい剤の入手先を黙秘し、あるいは嘘を述べることは、罪証隠滅の恐れがあるということになりますか?
 Q8   保釈すると、あるいは勾留を取り消すと、被疑者が、より嘘をつきやすくなる、ということは、罪証隠滅の恐れがあることになりますか。
 Q9  無罪を主張する場合は、保釈は認められない、勾留が取り消されることはない、と聞きましたが、本当でしょうか?
 Q10  実刑判決が予想されるが保釈が許可される場合は、どのような場合ですか?
 Q11  保釈金額は何を基準に決められるのですか?
 Q12  実務では、保釈にあたって何か条件をつけられますか?
 Q13  保釈された場合、身元引受人と同居する必要がありますか?
 Q14  保釈中、旅行する場合、裁判所の許可は必要ですか?
 Q15  再保釈の基準は、保釈の基準と同一ですか?
 Q16  被疑者が、捜査機関の呼び出しに応じない場合、それを理由として被疑者を逮捕できますか?
 Q17  警察が逮捕状を請求すると、裁判官は必ず逮捕状をだすものですか?
 Q18  「明らかに逮捕の必要性がないと認めるとき」とは、どういう場合ですか?
 Q19  黙秘権を行使したことを理由に勾留されますか?
 Q20  「勾留の必要性がない」とは、どういうことですか?
 Q21  「罪証隠滅の恐れがない場合」とは、具体的にどのような場合ですか?
 Q22  「逃亡の恐れがない場合」とは、具体的にどのような場合ですか?
 Q23  勾留質問に弁護人は立ち会えますか?
 Q24  被疑者に自殺の恐れがある場合は、逃亡の恐れがあるとして勾留が認められますか?
 Q25  裁判官が勾留期間を10日以内と定めることはできますか?
 Q26  勾留請求を却下する場合、身柄引受人が呼び出されることはありますか?
 Q27  最初の10日間の勾留後、再勾留が認められるのは、どういう場合ですか?
 Q28  再勾留が認められる「やむを得ない」場合とは、どういう場合ですか?
 Q29  再勾留が認められる「事件が複雑困難」な場合とは、どういう場合ですか?
 Q30  黙秘していることを理由として再勾留が認められますか?
 Q31  手持ち事件が多すぎるため捜査が遅延していることを理由として再勾留できますか?
 Q32  再勾留は、何度でもできますか?
 Q33  余罪の取り調べが未了であることを理由として勾留の延長請求ができますか?
 Q34  在宅のまま起訴され、実刑判決を受けました。控訴しましたが、勾留されることはありますか?
 Q35  勾留は、どういう場合に執行停止になりますか?
 Q36  執行停止の要件である「適当と認めるとき」とは、具体的にどういう場合を指しますか?
 Q37  被疑者や被告人が病気になれば、必ず執行停止になりますか?
 Q38  自分の妹の結婚式に出席したいのですが、勾留の執行停止は認められますか?
 Q39  勾留されている被疑者に接見等禁止決定が出される場合は、どういう場合ですか?
 Q40  接見等禁止決定が出される「罪証隠滅の恐れ」とは、具体的にどのような場合ですか?
 Q41  接見等禁止決定が出されやすい犯罪類型ってありますか?
 Q42  接見等禁止決定には終期がありますか?
 Q43  公訴が提起されたら接見等禁止決定は、必ずなくなるのですか?
 Q44  自分の子供が勾留中ですが、接見禁止で会えません。弁護人に手紙を託し子供に渡してもらうことはできますか?
 Q45  弁護士に頼んで、接見禁止中の被疑者に取調べの状況を確認してもらったり、被疑者に伝えてもらいたい伝言事項を託すことができますか
 Q46  逮捕するに際し、令状なしで捜索差押できる範囲はどこまでですか?
 Q47  「犯罪事実を証すべき物一切」という表示の捜索差押許可状は有効ですか?
 Q48  捜査機関が押収したものは、返してもらうことはできますか?
 Q49  押収された人は、捜査機関に対し、留置の必要がないとして、還付請求する権利がありますか?
 Q50  捜査機関に「押収の必要がない」として還付請求しましたが、無視されています。どうしたらよいでしょう。



1.
保釈されるための要件はどのようなものですか?



1.
「一定の場合」以外は、保釈は権利です。
「権利保釈以外の場合」でも、裁量として保釈が認められます。

原則保釈ですが、以下の場合は、権利保釈ができません。

  1. 起訴された罪の法定刑が重い時(死刑または無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪)
  2. 前に重い罪で有罪となったとき(死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪)
  3. 常習犯。ただし、長期3年以上の懲役または禁錮が法定刑の場合
  4. 罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき
  5. お礼参り等関係者を脅す恐れがあるとき
  6. 被告人の氏名又は住所が分からないとき









2.
権利保釈(刑事訴訟法89条)に当たらない場合には、保釈は認められませんか?



2.
裁量保釈があります。

権利として保釈が許されない場合であっても裁量で保釈されることがあります。
必要性や相当性を裁判所が判断して保釈を申請するかどうか決めますが、あくまでも裁判所の裁量になります。










3.
保釈はなかなか認められないと聞きましたが。



3.
最近は、保釈率が高くなっています。

統計的にみると昭和50年代なかばまでは、保釈率は5〜4割台で推移していましたが、その後は、保釈率は下がり続け、平成15年には、12.6%にまで下がりました。
しかし、その後は、人質司法に対する反省から、保釈率は高くなり、20%弱にまで回復しました。それでも、かつての50%には遠く及びません。
原因は、薬物や入管法関連という保釈の難しい案件が増えてきたこともありますが、最大の原因は、裁判所が、保釈の可否を形式的に判断するようになったことです。一時は道交法違反以外は、保釈はありえないという扱いをしていたときがあります。










4.
権利保釈で、保釈請求が却下される最大の理由はなんですか?



4.
「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき」です。

権利保釈と言いながらも、現実には、保釈がなかなか認められない最大の理由は、「罪証隠滅の恐れ」です。
共犯者がいる、否認している、薬物犯罪である等、一定の枠に該当すると、ほとんど審理することなく「罪証隠滅の恐れ」として保釈請求を却下しています。
保釈や勾留の可否は、もっぱら、この「罪証隠滅の恐れ」の有無を巡る争いであり、身柄拘束からの早期解放を目指す弁護活動は、もっぱら「罪証隠滅の恐れがない」ということの立証活動です。










5.
「罪証隠滅のおそれ」とは、どのように判断されるのですか?



5.
対象、態様、可能性、意図の4点から総合的に判断されます。

「罪証隠滅の恐れ」は、ただ漠然とした「恐れ」では足りず、具体的な蓋然性をもっていることが必要だというのが、裁判所の公式見解です。
そして、対象―罪証隠滅の対象は何か?
態様―どういう態様で隠滅しようとするのか
可能性―罪証隠滅行為に出る可能性はあるのか
意図―被疑者・被告人は、そういう意図があるのか
の観点から、具体的資料を基に検討するとされています。
ただ、弁護士サイドからみると、裁判所は、公式見解とは別に、かなり漠然とした「おそれ」だけで、保釈を不許可にしたり勾留を許可したりしています。










6.
罪証隠滅の対象には、量刑事情も含みますか?



6.
重要な事実は、含みます。

罪証隠滅の対象が有罪・無罪という犯罪の成立に関わる事実だけなら、被疑者・被告人が罪を認めているときは、罪証隠滅の恐れがないことになります。
しかし、裁判所は、どの程度の刑にするかという、量刑に際して考慮される事実も、罪証隠滅の対象に含まれると考えています。
ただし、量刑事情というのは、際限のないものですから、量刑事情一切を含むとなると、およそ罪証隠滅のおそれのない被疑者・被告人など存しないことになります。
そこで、重要な量刑事情に限って罪証隠滅の可能性を検討するとして、ある程度の絞りをかけています。










7.
覚せい剤の入手先を黙秘し、あるいは嘘を述べることは、罪証隠滅の恐れがあるということになりますか?



7.
態様により異なります。

覚せい剤では、被疑者あるいは被告人は、入手先について、ときおり、見え透いた嘘を平気でつくことがあります。
こういう場合は、重要な量刑事情として、罪証隠滅の恐れがある、つまり勾留は継続され、あるいは保釈請求は却下されるでしょうか。
まず営利性が問題となる場合とか、被疑者において覚せい剤の認識を争っている場合などは、入手先を秘匿することは、重要な量刑事情あるいは犯罪の成立に関する重要事実そのものであり、「罪証隠滅のおそれがある」ということになります。
入手先がどこかは、被疑者・被告人の常習性や覚せい剤であることの認識に決定的な影響を及ぼすからです。
これに対し、覚せい剤の自己使用の場合は、従来から刑の段階的運用が行われてきました。
したがって、前科が決定的に重要な事実であり、入手先を正直に述べたか否かは、刑の段階的運用にそれほど影響を与えるわけではありません。










8.
保釈すると、あるいは勾留を取り消すと、被疑者が、より嘘をつきやすくなる、ということは、罪証隠滅の恐れがあることになりますか。



8.
なりません。

勾留は、自白獲得のための手段ではありません。確かに、留置場に拘束し、取り調べをしたほうが「自白」獲得には効果的ですが、勾留は、自白獲得のための手段ではありません。










9.
無罪を主張する場合は、保釈は認められない、勾留が取り消されることはない、と聞きましたが、本当でしょうか?



9.
原則、無罪を争うと保釈や勾留取消は厳しくなります。

現在の刑事実務では、無罪を争うと、保釈や勾留取消に裁判所が大変厳しい態度で臨むことは事実です。
弁護人が保釈請求、あるいは勾留取消請求で、被疑者あるいは被告人が無罪であると主張することが、結構、あります。「無罪なんだから、罪証隠滅のおそれなど、ありうるはずがない」という主張です。
しかし、それは、多くの場合、逆効果です。無罪を主張すればするほど、罪証隠滅の余地が大きくなると裁判所は考えるからです。
その結果、あたかも、勾留は、自白獲得の手段のようになり、これが、わが国の人質司法―無罪を争うと保釈が認められないという状況を産み出したのです。










10.
実刑判決が予想されるが保釈が許可される場合は、どのような場合ですか?



10.
罪証隠滅の恐れがない場合か、審理の長期化が予想される場合です。

[長期の実刑が予想される場合]
身上関係が安定している、あるいは治療を要する持病がある、介護を要する家族がいる。こういう場合は、重い罪の場合でも、罪証隠滅のリスクとの兼ね合いで、保釈を判断します。
罪証隠滅のリスクが低いときは、重い罪でも保釈は認められます。リスクが低くないときは、起訴前の保釈は認められませんが、審理が進むに連れてリスクは低減し、保釈の確立が高くなります。

[短期の実刑が予想される場合]
罪証隠滅のリスクが高く、かつ、審理が短期間で終わる場合は、保釈の認められる確率は低いでしょう。しかし、刑は短期でも事案の性質上長期の審理が予想されるときは、審理の進行によって保釈の認められる確率は高くなります。

[罪証隠滅の恐れが類型的に少ない場合]
無免許運転、酒気帯び運転は、罪証隠滅のおそれが考えられず、保釈の認められる確率は高くなります。










11.
保釈金額は何を基準に決められるのですか?



11.
「被告人の出頭を保障するに足りる相当な金額」かどうかです。

保釈金額については、統一的な基準がなく、各裁判官が、それぞれの「相場」をもっています。
ただ、全国的な相場というのは100万円から200万円、特に多いのが150万円から200万円です。東京地裁は、これより、50万円程度高いかなという気がします。
なお、統計的には、100万円以上300万円未満が全体の82%だそうです。
また、再保釈の場合は、当初の保釈金の1割から5割増しの保釈金が多いようです。










12.
実務では、保釈にあたって何か条件をつけられますか?



12.
被告人の住居その他「適当と認める条件」を附すのが一般的です。

刑訴法は、保釈を許すにあたり、保釈金額を定めるとともに被告人の住居その他「適当と認める条件」を附すことができるとしています。
その条件というのは被告人の制限住居等 旅行制限 事件関係者との接触禁止が一般的です。
また、「住居を変更する必要ができたときは、事前に書面で裁判所に申し出て許可をもらいなさい」という条件も一般的に附されます。
そのほか、召喚を受けたら出頭しなさい逃亡・証拠隠滅をしてはいけませんという、当たり前の条件を附すことも少なくありません。










13.
保釈された場合、身元引受人と同居する必要がありますか?



13.
必要ありません。

保釈にあたり実務上身柄引受人による身柄引受書(ガラウケ)を徴するのが慣例になっています。
しかし、身柄引受人と同居する必要はありません、身柄引受人は、同居の親族とは限られないからです。
ただし、保釈が微妙なときは、やはり身柄引受人との同居は、のぞましいものです。










14.
保釈中、旅行する場合、裁判所の許可は必要ですか?



14.
保釈の条件として定められたら、許可が必要となります。

被告人の出頭確保という観点から、保釈にあたり旅行制限を附すというのは、一般的に行われています。
ただ、旅行なら全部というのではなく、「海外旅行または3日以上の旅行をする場合には、前もって、裁判所に申し出て、許可を受けなければならない」という、一定条件での旅行のみについて許可をもらいなさいと条件を附すのが一般的です。
また、国内旅行は、格別制限することなく、「事前に裁判所に届け出なさい」と定める場合もあります。










15.
再保釈の基準は、保釈の基準と同一ですか?



15.
異なります。逃亡の可能性が中止になります。

一審判決で実刑判決が出た場合、もはや、罪証隠滅の防止の必要性は定型的に減少し、反面、刑の執行確保という必要性が重視されます。
そのため、控訴審で判決が変更される可能性、身上関係の安定性を中心に再保釈が判断されます。
一審で身上関係の安定を理由に保釈が認められた場合は、実刑判決がでることで逃亡のリスクは高まりますが、それでも、再保釈を認める必要性があるか否かを判断し、必要性が肯定されれば再保釈は認められることになります。
刑期の割に審理が長期化したため保釈が認められた場合で、控訴審でも覆る可能性が低いと考えられるケースでは、刑の執行確保という必要性が高く、再保釈は、原審よりもハードルが高くなります。
なお、近時は、実刑判決を免れようとして逃亡している被告人が少なくないこと、時間稼ぎが目的の上訴が多いことから、再保釈が原則として認めるべきでないという意見が強くなりつつあります。










16.
被疑者が、捜査機関の呼び出しに応じない場合、それを理由として被疑者を逮捕できますか?



16.
理屈はともかく逮捕される場合がきわめて多いです。

被疑者が、捜査機関の呼び出しに応じないことは、現行法上、逮捕理由にはなっていません。ですから、呼び出しに応じないことを逮捕理由にはできません。しかし、呼び出しに応じないことは、罪証隠滅・逃亡のおそれを徴表するものであり、それを理由として逮捕できます。
実務上は、再々にわたる呼び出しに応じないことは、とりわけ罪証隠滅のおそれを推認させるものだ、という取扱いになっています。
よほどのことがない限り、「呼び出しに応じなければ、逮捕」と覚悟しておいたほうが賢明です。










17.
警察が逮捕状を請求すると、裁判官は必ず逮捕状をだすものですか?



17.
100件に1件は、逮捕状の請求を却下しているようです。

平成20年から同22年における通常逮捕の却下率は、0,03%であり、取下率は1%前後ですから、大体、100軒に一軒は、事実上裁判官により逮捕が却下されているといえます。
裁判官は、検察官等から逮捕状の請求があったときは、「罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるとき」は、「明らかに逮捕の必要性がないと認めるとき」以外は、逮捕状を出します。
逮捕は捜査の初期段階ですから、有罪判決を得るレベルでの証拠資料は必要ありませんが、それを考慮しても、あまりにも証拠が薄弱なときは、逮捕状の請求を取り下げるよう勧告し、あるいは逮捕状の請求を却下します。










18.
「明らかに逮捕の必要性がないと認めるとき」とは、どういう場合ですか?



18.
事案が比較的軽微で、かつ、逮捕の必要性がそれほど高くない場合です。

迷惑防止条例違反、器物損壊、等事案が軽微であるにも関わらず、

@ 被疑者が安定した定職についている。
A 家族と同居している。
B 被疑者が高齢・年少・病弱で、逮捕による不利益が大きい
C 犯行発覚から相当期間経過しているにも関わらず逃亡、罪証隠滅を行っていない場合
などの場合は、「明らかに逮捕の必要性がないと認めるとき」に該当する可能性が高くなります。

重大事件の場合は、以上の事情があっても、「逮捕の必要性がないとはいえない」というのが、刑事実務の考えです。










19.
黙秘権を行使したことを理由に勾留されますか?



19.
勾留されやすくなる傾向はあります。

黙秘権は、憲法が認めた被疑者・被告人の権利ですから、黙秘権を行使すること自体は罪証隠滅の恐れ、逃亡の恐れがあると認定することはできません。
ただ、正直に犯罪事実を自白することは、罪証隠滅・逃亡の恐れを大幅に減縮させることは否定できません。それとの対比で、黙秘権の行使をすることが、結果的に、自白事件との対比で、罪証隠滅・逃亡の恐れを減縮させるものとはいえません。その意味で、黙秘権の行使は、勾留の判定に不利になります。










20.
「勾留の必要性がない」とは、どういうことですか?



20.
事案の軽重、勾留による不利益の程度、捜査の実情等を総合的に判断し、被疑者を勾留することが実質的に相当でない場合です。

被疑者を勾留するには、「勾留の理由」(罪証隠滅の恐れ等)のほかに「勾留の必要性」が要求されます。刑訴法に明文はないのですが、「勾留の必要性がなくなったら勾留を取り消す」という刑訴法87条の規定から、勾留の必要性があることが勾留の要件であることは、実務では、当たり前の見解になっています。
実際に、勾留の理由は認めながら勾留の必要性がないとして、勾留請求を却下する例は、結構あります。
勾留の必要性は、主に以下の3点を中心に総合的に判断します。

@ 勾留の理由のレベル
罪証隠滅の恐れ、逃亡の恐れがどの程度あるのか
A 事案の軽重
比較的軽微な事件は、勾留の必要性が減少します。
B 勾留による不利益の程度の大きさ勾留による不利益が著しく大きいと考えられる場合は、必要性がないと判断されやすくなります。
例えば、
被疑者が病気のため勾留に耐えられない
被疑者が永年真面目に努めた職を失う
被疑者が大事な試験を受けられなくなる
被疑者による保護を要する家族がおり、被疑者以外に保護しうるものがいない
等の場合です。










21.
「罪証隠滅の恐れがない場合」とは、具体的にどのような場合ですか?



21.
諸事情を総合的に判断します。

以下のケースが、実務では、罪証隠滅の恐れがないと考えられています。
現行犯逮捕のケース。
被疑者が簡単に連絡がとれる関係者がいない場合。
証拠上明白な事案。
証拠収集をすでに終えている場合。
勾留しても罪証隠滅の実効性がない場合。
軽微な犯罪。










22.
「逃亡の恐れがない場合」とは、具体的にどのような場合ですか?



22.
諸事情を総合的に判断します。

以下のケースが、実務では、逃亡の恐れがないと考えられています。
現在の生活を捨てても逃亡するとは思われない場合(軽微な犯罪、執行猶予が十分期待できる場合、安定した仕事、家族、住居がある)
逃亡を確実に阻止できる身元引受人がいる。
事件後に逃亡を疑わせるような行動が見られない。










23.
勾留質問に弁護人は立ち会えますか?



23.
立ち会うことはできません。

現行法上、弁護人の立会を禁ずる規定はありませんが、これを認める規定もありません。ただ、実務上、勾留質問に弁護人が立ち会うことは、勾留質問の制度から好ましくないという扱いをされております。勾留質問室も、弁護人の立会を予定した構造にはなっていません。
実務においては、裁判官との事前の面接がときおり行われる場合もありますが、通常は、弁護人は意見書を差し入れることで勾留に対する意見表明を行うことになっています。










24.
被疑者に自殺の恐れがある場合は、逃亡の恐れがあるとして勾留が認められますか?



24.
実務では「自殺の恐れ」がある場合、勾留を認めています。

自殺は「あの世への逃亡だ」とする意見もありますが、あの世への逃亡も逃亡だと考えるのは無理があります。
しかし、実務では、検察官からの勾留請求に、勾留理由として他の理由に付して被疑者の自殺の恐れがあることを付記することがしばしばあります。捜査官向けのテキストでも、「自殺の恐れは勾留理由になる」と当然のように記載されています。










25.
裁判官が勾留期間を10日以内と定めることはできますか?



25.
できません。

再勾留の場合、勾留期間を何日とするかは裁判官の裁量にゆだねられていますが、勾留は「する」か「しない」かのどちらかで、勾留する場合は、当然に10日になるというのが実務です。実際、勾留状には、勾留期間を記載する欄がありません。
事件の内容から10日も必要ないと思われる場合は、弁護人が検事に働きかけて早期の釈放を得るしかありません。










26.
勾留請求を却下する場合、身柄引受人が呼び出されることはありますか?



26.
それなりに、あります。

刑事訴訟法43条3項は、裁判官は、決定や命令をするについて必要があるときは、事実の取り調べをすることができると定めています。
そこで、実務では、被疑者に確実な身柄引受人がいれば逃亡の恐れは高くないと判断しているときは、身柄引受人を呼び出して、身柄引受の意思や確実性について取り調べることは、普通に行われています。










27.
最初の10日間の勾留後、再勾留が認められるのは、どういう場合ですか?



27.
再勾留が「やむを得ない」場合です。

被疑者の勾留は10日間が原則ですが、「やむを得ない事由」があるときは、最大10日間、延長ができることになっています。
統計上は、10日以内の勾留で終了した事件が41%、15日以内が約4%、合計20日以内が55%です。
昭和38年の統計では、勾留総数が12万件に対し、勾留延長許可はわずかに23,000件であり、近時は、勾留延長がむしろ普通という異常な事態になっています。










28.
再勾留が認められる「やむを得ない」場合とは、どういう場合ですか?



28.
事件が複雑か、証拠の収集がやむなく遅延している場合等です。

「やむを得ない事由」の有無は、「事件が複雑困難である」か、「証拠収集が遅延もしくは困難」等のため、さらに勾留しなければ、起訴不起訴の決定ができない場合です。
もつとも、実務上、勾留状の勾留延長の理由欄には「事案複雑」「証拠物多数」「参考人取り調べ未了」「被疑者取り調べ未了」「鑑定未了」「裏付け捜査未了」「補充捜査未了」などのゴム印を単独または複数組み合わせて押捺し、それで十分とする取扱いが行われています。
裁判官が、どこまで勾留延長に真摯に対応しているか疑問な場合も、ないとは言い切れません。










29.
再勾留が認められる「事件が複雑困難」な場合とは、どういう場合ですか?



29.
被疑者、被疑事実、証人が多数、証拠が多数、複雑な場合です。

具体的には以下の事件です。
1、組織的犯罪、団体がらみの犯罪等被疑者関係者が多数に及ぶ事件
2、経済犯罪・租税犯罪等帳簿等の物証が多数にわたる事件
3、相当広範囲の捜査が必要な重大事件
4、被疑者・関係者らの供述の食い違いがある、あるいは証拠の食い違いがある事件。
なお、内乱、外患、国交に関する罪、騒乱罪は、定型的に事案が複雑なことから、勾留延長が10日の他に、さらに5日勾留が認められています。










30.
黙秘していることを理由として再勾留が認められますか?



30.
認められるべきではありませんが、実務上は、認めています。

黙秘権は憲法が認めた権利であり、また、自白目的の身体拘束も認められるべきではありません。
したがって、黙秘権を行使していることを理由として再勾留を認めることなど、絶対にあってはならないことです。
しかし、実務では、黙秘すれば捜査が難航するから、再勾留を認める「やむを得ない事由」にあたる、として、再勾留を認めています。










31.
手持ち事件が多すぎるため捜査が遅延していることを理由として再勾留できますか?



31.
認められるべきではありませんが、実務上は、認めています。

検察官や警察の手持ち事件が多数のため取調べがすすまず、やむなく、再勾留を申請する。実務では、当たり前のように行われています。接見に行くと、「勾留されたが、何の取り調べもうけていない」として、被疑者を勾留したまま取り調べることなく放置していす。
しかし、裁判所は、法は不可能を強いるものではないとして、検察庁や所轄警察を全体として見て、手持ち事件が多数で取り調べができなかったときも再勾留の「やむをえない事由がある」と判断しています。










32.
再勾留は、何度でもできますか?



32.
10日以内なら、何度でもできます。

勾留延長は、「通じて10日を超えることはできない」と刑事訴訟法208条2項は規定しています。
10日を超えなければ、何回でもできます。例えば、まず7日勾留延長して、さらに3日延長できます。










33.
余罪の取り調べが未了であることを理由として勾留の延長請求ができますか?



33.
好ましい事ではありませんが、実務では認めています。

勾留は、特定事件の捜査のために行われるものですから、「被疑者にはまだ余罪があり、それが取り調べがまだだ」というのは、勾留の延長理由にはならないはずです。
ところが実務では、こういう場合にも勾留の延長を認めています。余罪を取り調べなければ、起訴不起訴の決定ができないから、余罪取り調べも勾留延長の理由になるという理屈です。










34.
在宅のまま起訴され、実刑判決を受けました。控訴しましたが、勾留されることはありますか?



34.
あります。

勾留の開始については、その始期に規制はありませんから、いつでもできます。
原審が実刑判決を言い渡したのちも、控訴審に記録が移るまでは、原審の裁判官も勾留決定を言い渡すことができます。










35.
勾留は、どういう場合に執行停止になりますか?



35.
裁判所が勾留の執行停止を「適当と認めるとき」です。

勾留の執行停止とは、勾留を取り消さず、ただ効力を一時的に停止させて被疑者や被告人の身柄を解放する制度で、刑事訴訟法95条が規定しています。
保釈と同様の機能ですが、被疑者にも認められている制度であること、かつ、保証金が不要な点が保釈と異なる制度です。保釈と異なり、当事者に申し立て権は認められておりません。
どういう場合に、この勾留の執行停止が認められるかについて、法は裁判所が「適当と認めるとき」という規定しかしていません。










36.
執行停止の要件である「適当と認めるとき」とは、具体的にどういう場合を指しますか?



36.
被告人の病気や親族の冠婚葬祭、重要な試験等です。

実務では、被告人の逃亡のリスク等を覚悟してもなお勾留の執行停止を認めなければならない切実な必要性がある場合が、「適当と認めるとき」にあたります。
実務的には、「被告人等の病気」のケースが一番多く、次いで「親族の冠婚葬祭」、それから「入学試験等の重要な試験受験」が多いようで、他は、ほとんど例がありません。










37.
被疑者や被告人が病気になれば、必ず執行停止になりますか?



37.
被告人の病気や親族の冠婚葬祭、重要な試験等です。

実務では、被告人の逃亡のリスク等を覚悟してもなお勾留の執行停止を認めなければならない切実な必要性がある場合が、「適当と認めるとき」にあたります。
実務的には、「被告人等の病気」のケースが一番多く、次いで「親族の冠婚葬祭」、それから「入学試験等の重要な試験受験」が多いようで、他は、ほとんど例がありません。










38.
自分の妹の結婚式に出席したいのですが、勾留の執行停止は認められますか?



38.
認められません。

自分の親族の危篤や葬儀などは、永遠の別離となる可能性が高いので、極めて短期間ですが、勾留の執行停止は認められます。
しかし、結婚式となると、「永遠の別離」というわけではなく、執行停止が認められることは、まず、ないでしょう。










39.
勾留されている被疑者に接見等禁止決定が出される場合は、どういう場合ですか?



39.
罪証隠滅の恐れと逃亡のおそれがある場合です。

被疑者を勾留する理由というのは、ほとんどが「罪証隠滅のおそれがある」という理由で、たまに「逃亡の恐れ」も勾留の理由になります。
ところが勾留しても、勾留しただけでは依然として「罪証隠滅のおそれがある」か「逃亡の恐れ」がある場合は、今度は、接見禁止処分になります。
そして、接見禁止になると、弁護士以外との面談が禁止されるばかりか、親や妻からの差し入れも禁止されます。










40.
接見等禁止決定が出される「罪証隠滅の恐れ」とは、具体的にどのような場合ですか?



40.
勾留してもなお、「罪証隠滅の恐れ」がある場合です。

具体例として
暴力団や犯罪グループによる組織的犯罪
複数の者による計画的犯行
事案が複雑で多数の証拠を収集する必要がある事案
重要な証拠が関係者の供述に限られる事案
被疑者・被告人が証人に強い影響力を有する事案
証39拠を偽造しやすい事案
被疑者・被告人に罪証隠滅の前歴がある場合
被疑者・被告人が不自然な弁解をしたり、否認・黙秘している場合
重い刑が予想される場合
共犯者がいる事案
第三者からの働きかけにより被疑者が罪証隠滅の意図を抱くような場合です。










41.
接見等禁止決定が出されやすい犯罪類型ってありますか?



41.
あります。

接見等禁止決定が出されやすい犯罪類型としては
公職選挙法違反事件
贈収賄事件
薬物事件(特に密売事件)
拳銃所持事件
暴力団等による組織的な殺人や傷害事件
公安事件
組織的詐欺事件
が、一般的に接見等禁止決定がでます。これらは、勾留してもなお、「罪証隠滅の恐れ」があると類型的に考えられています。










42.
接見等禁止決定には終期がありますか?



42.
「公訴提起いたるまで」という制限を付す場合が多いです。

接見禁止等決定は、終期は当然にはありませんが、一般的には「公訴提起にいたるまで」という制限を付して裁判所が接見等禁止決定をだします。
検察は、公訴提起のために捜査している以上、公訴提起した以上は、もう捜査の必要はなく、したがって、接見等禁止の必要もないと考えられるからです。
接見等禁止決定は、原則として、被疑者段階に限られることになります。










43.
公訴が提起されたら接見等禁止決定は、必ずなくなるのですか?



43.
まれに公訴提起後も、接見等禁止決定が続く場合があります。

検察官が公訴提起後も、なお接見等禁止の必要がある場合は、起訴と同時に接見等禁止の請求をし、裁判官は、第一回公判期日終了までという制限を付して決定を出します。
それでも検察官が、第一回公判期日後も、接見等禁止決定の継続が必要と考える場合は、さらに請求をし、裁判官が、「第○回公判期日終了まで」「証人尋問終了まで」という制限を付けて接見等禁止決定をだします。
ただ、こういう運用は、弁護権の保障という観点から、かなり疑問があります。










44.
自分の子供が勾留中ですが、接見禁止で会えません。弁護人に手紙を託し子供に渡してもらうことはできますか?



44.
できません。

憲法は、被疑者と弁護人が面会する権利―接見交通権を無条件で保障しています。そこで、弁護人が、接見禁止の被疑者に、親族から託された手紙を渡すことも、それはそれでかまわないと思うのですが、実務は、禁止しています。接見禁止の一部解除申請をして手紙を託すべきだというのが実務です。
弁護人の接見交通権といえども、捜査の必要性により制限されるというのが実務の考えです。










45.
弁護士に頼んで、接見禁止中の被疑者に取調べの状況を確認してもらったり、被疑者に伝えてもらいたい伝言事項を託すことができますか



45.
できません。

弁護士は、弁護人として選任されていなくても、接見禁止処分中の被疑者と接見できますが、その接見は、「弁護人となろうとする目的」が必要です。
親族や友人が「弁護人になってくれ」ということで、被疑者に依頼するのはかまいません。しかし、親族や友人から「様子をうかがってきてくれ」という理由で接見することはできないのです。
ときおり、弁護士のホームページに、「北海道から沖縄まで、費用を支払ってもらえば接見に行き、法律相談に応じます」という記事がありますが、あれは、違法です。
問題になるのは、弁護士会が、重要事件について被疑者や親族からの要望がないにもかかわらず当番弁護士を派遣する制度です。これを違法とすることが非常識なのは明白で、実務では、「被疑者に、弁護士会から派遣された弁護士と接見するかを確認してから、接見させているので違法ではない」という扱いをしているようです。










46.
逮捕するに際し、令状なしで捜索差押できる範囲はどこまでですか?



46.
被疑者を「逮捕する場合」に「逮捕の現場で」令状なしで捜索・差押ができます。

刑事訴訟法220条は、現行犯逮捕、緊急逮捕、通常逮捕、いずれの場合でも、被疑者を「逮捕する場合」に、必要があるときは、「逮捕の現場」で令状なしで捜索・差し押さえができる旨を定めています。
時間的には「逮捕する場合」に限られ、場所的には「逮捕の現場で」の捜索差押に限られます。










47.
「犯罪事実を証すべき物一切」という表示の捜索差押許可状は有効ですか?



47.
特定を欠き無効です。

憲法35条は、捜索差押令状は、捜索する場所と押収する物を明示しなさいと規定しています。
ただ、現実を考えると、捜査機関が捜査の現場に臨んで初めて差し押さえるものが明らかになるというのが捜査の実体で、何を押収するか明示せよと捜査機関に要求するのが現実離れしていることも否定できません。
そこで実務では、たとえば「会議議事録、指令、連絡文書、報告書、メモその他本件に関連ありと思料される一切の文書及び物件」という記載でも、「その他本件に関連ありと思料される一切の文書及び物件」の前に、具体例が記載されているから、特定にかけるところはないとしています。










48.
捜査機関が押収したものは、返してもらうことはできますか?



48.
できます。

押収物を返してもらう制度として、還付請求、仮還付請求、被害者還付請求、の3つがあります。
[還付請求]
還付請求を受けた検察官は、押収物で留置の必要がないものは、被告事件の終結を待たずに決定で還付しなければなりません。(法123条T)

[仮還付請求]
還付請求を受けた検察官は、押収物で留置の必要があっても、所有者、所持者、保管者または差出人の請求により、決定で、仮に還付することができます。(法123条U)

[被害者還付請求]
押収物が賍物の場合、被害者に還付すべき理由が明らかなときに限り、被害者に還付しなければなりません。(法124条U)

[準抗告]
捜査機関のした押収物の還付に関する処分に準抗告ができます。(法430条TU)










49.
押収された人は、捜査機関に対し、留置の必要がないとして、還付請求する権利がありますか?



49.
あります。

刑事訴訟法123条Tは、「留置の必要がないものは、決定でこれを還付しなければならない」と規定するのみで、「請求により」と規定していないため、被押収者は、「返してください」とお願いはできても、「返しなさい」という請求権はないと解することもできます。
しかし、最高裁は、H15.6.30決定で、留置の必要がない場合であることを理由として還付請求できる、として、還付請求権を認めています。
ただし、以下の場合は、留置の必要がなくても、還付の請求はできません。
(1)申立人以外の者に還付することが相当である場合
(2)捜査機関に更に事実を調査させるなどして新たな処分をさせることが相当である場合
なお、(1)の場合、裁判所は、裁量で申立人以外の者に還付はしてはいけません。










50.
捜査機関に「押収の必要がない」として還付請求しましたが、無視されています。どうしたらよいでしょう。



50.
還付請求却下処分があったものとして準抗告します。

被押収者が、押収の必要はないとして還付請求しても、検察は、明確な返答をしません。無視します。
そうなると、請求に対し何らかの処分をしているわけではないので、異議申し立(準抗告)ができないことになります。
しかし、それは明らかに不合理なので、実務上は、「押収物の還付請求に対し検察官がその当否を判断するのに必要と考えられる合理的な期間を超えて応答しない場合には、黙示的に還付請求却下処分があったものとして、準抗告できる」と解されております。









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