財産分与の基本中の基本での意見の食い違い

弊著『弁護士のための財産分与の実務のポイント』で述べていますが、わが民法は、夫婦別産制が基本となっています。しかし、同時に、夫婦間には協力扶助義務があり、双方は、同等の生活を送る権利があります。そのため「財産の帰属」という点では夫婦の財布は別なのですが、財産の価値の把握という点では、夫婦は同等の権利があります。夫の給与は夫のものですが、妻は、その夫の給与を自分の権利として費消できます。別に、夫から生活費相当額の給与を贈与してもらっているわけではありません。食べさせてもらっているわけでもなく、食べさせてやってるわけでもありません。だから、配偶者は、婚姻期間中は、その財産の価値を把握しています。これが実質的夫婦共有財産と言われるもので、名称は似ていますが、物権法上の共有とは全く異なる概念です(書籍59頁)。
夫婦関係を解消する際には、同時に、財産関係の清算をする必要がありますが、その清算は、その把握した価値の清算という形態になります。これが財産分与で、まさに価値の配分なのです。価値を配分するのですから、分与義務者の資産がプラスの場合のみ行われます。マイナスの場合は、配分すべき価値がないからです。価値の配分である以上、金銭での清算が原則です。
現在の裁判実務は、Excelに夫婦それぞれの資産と負債を書き込み、双方の純資産を算出し、この金額が等しい金額になるように財産分与するというのは、この解釈を前提としています。
ところが、結構、実務家の間で親しまれてる書籍であるにもかかわらず、この財産分与を、個々の財産の分割とする書籍があります。財産分与は、個々の資産や負債を分割する制度だとするのです。その違いが端的に表れるのが、債務の扱いです。実務の価値把握説に立つ限り、財産分与では、債務は純資産算出のための計算式に現れるにすぎず、その分担は問題になりません。しかし、この立場だと、義務者が資産より負債が多くても共有持分の清算等必要性があれば財産分与は行われることになります。さらに債務は計算式とは別に、どのように分担するかは問題となり、債務を種類別に分類し、生活費指数でわけるとか、収入比で分けるという提言をしておられます。しかも、これが、裁判所の考え方だと言っておられるのですから、地域によっては、財産分与を個々の財産の分割と把握する裁判所もあるのでしょうか?
そういえば、以前、財産分与は個々の財産の分割だと言う弁護士さんがおられて困惑したことがありますが、おそらく、その書籍で勉強したのでしょう。
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