DV・モラハラは、被害者基準で考える

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DV・モラハラ案件は、支援措置からDV保護命令まで複数の制度があり、要件の厳しさに応じて、保護のレベルも高まるという構造になっています。

注意していただきたいのは、DV・モラハラは、被害者基準で考えていただきたいということです。同じ行為や発言でも、全然動じない人もいれば逆に体が震えだすほど怖がる人がいます。私も相談を受けていて、こんなんで怖いの?と思う場合もあるし、え?こんなこと言われても平気なんだと思うこともあります。恐怖の基準は人さまざまで、冷静な第三者の想定する通常人の感覚で判断すべきではありません。特に、DV・モラハラ被害者は、非常に敏感になっていて、追い越した車の運転手が相手に似ていたとか、電柱に人影を見たとか、それだけでパニックになります。相手からみると、大げさに演技していると見えるんでしょうが、本当に脅えます。

ですから、大袈裟だとか、もう少し強い意志を持ちなさいなどとは考えずに、その人の目線で考え判断するということは非常に大切です。

大体、DVの怖さは、相手が想定を超えた行動をとるのではないかという恐怖心です。ストーカー殺人とか、DV夫が妻を殺したとか、いろいろ新聞にのります。おそらく関係者の誰もが、そういう行動は想定していなかったはずです。以前、元プロA級棋士だった人が、奥さんが子供を連れて逃亡したことから、普段から熱心に共同親権を唱え、「子供を連れて行った妻を誘拐罪として逮捕起訴しろ!」みたいな主張をネットや街頭演説で繰り返し、元A級棋士という経歴もあって、当時は、子供を連れ去られた親のヒーローみたいになっていました。しかし、そのヒーローは、最終的には、凶器を持って妻の実家に押し入り、殺人未遂で逮捕され、懲役5年の実刑判決を受けています。このとき、この元A級棋士を応援していた方々も、批判的な目で見ていた方々も、まさか、元A級棋士が凶器をもって実家に押し入るなんて考えていなかったと思うんですね。こういう想定外の行動の恐怖、これが、DVの特徴です。

以前、支援措置を利用したことで不法行為だと認定した判例があり、その時の認定基準は、通常人の判断なら、という基準を用いて、支援措置を不法行為だと認定しています。

例えば、東京地裁の令和6年判例は、親子交流合意成立後の二回目の支援措置について「支援の必要性が存在しないことが客観的に明らかであり、申出者がそのことを知りながら、又は通常人であれば容易に知り得たにもかかわらず、あえて支援措置の申出をしたなど、その支援措置の申出が支援制度の趣旨に照らして著しく相当性を欠く場合、その申出は加害者とされる者に対する不法行為を構成する」と述べています。

しかし、モラハラにせよ、パワハラにせよ、基準は、通常人ではなく、当該被害者を基準とするというのが実務です。なんでモラハラやDVだけ、通常人を基準とするのか、おかしいですよね、まあ、高裁で破棄されましたが、いまだに、裁判官にさえ、DV被害者の恐怖心を充分、認識できていない方がおられるということです。

家族問題は、森法律事務所にご相談ください。(TEL:03-3553-5916)
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この記事を書いた人

1951年新潟県出身。中央大学法学部卒業。東京弁護士会所属。1981年弁護士登録。1983年森法律事務所設立。家事事件・不動産事件等が中心業務。主な著作に『法律家のための相続判例のポイント』・『法律家のための遺言・遺留分実務のポイント』・『弁護士のための遺産相続実務のポイント』(いずれも日本加除出版)などがある。趣味はカメラを片手に旅すること。森法律事務所:東京都中央区新川2-15-3 森第2ビル TEL:03-3553-5916