4つの離婚原因
- 相手の同意がなくても離婚できる場合って、どういう場合ですか
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裁判所が婚姻関係が破綻していると認定した場合です。
法律は、離婚原因として、以下の4つを規定しています。
1号 不貞行為
2号 悪意の遺棄
3号 3年以上の生死不明
4号 そのほか婚姻を継続しがたい重大な事由
しかし、現在は、離婚原因は、第4号の「婚姻を継続しがたい重大な事実」のみで、3号は別として、1・2号は、4号の例示にすぎないと解釈されています。裁判所が、婚姻を継続しがたい重大な事実があり4号に該当すると判断すれば、相手方が離婚に応じなくても、裁判所が離婚させてくれます。(民法770条)
ただし、「婚姻を継続しがたい重大な事由」があっても、「一切の事情を考慮して婚姻の継続を認めるのが相当」な場合は、離婚を認めない場合もあります。
離婚認定方法
- 裁判所は、どうやって離婚原因を認定するのですか
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原則は、3年間の別居です。
その時点で別居が3年経過していれば、被告は、それでもなお破綻していないとする事実を主張・立証しなければなりません。
たとえば、原告は有責配偶者である。今、離婚を認めると、被告の受ける不利益があまりにも大きい、等の事実です。
別居が3年経過していなければ、原告は、3年経過していなくとも破綻はしているとする事実を主張・立証する必要があります。例えば、被告はモラハラである、有責配偶者である、同居期間が短い等です。
もっとも、調停や訴訟をしていれば1年は経過しますから、3年待つ必要はありません。
元東京家裁調停委員の視点
最近は、「別居すれば離婚」という言葉が独り歩きして、別居だけが基準と考えられがちですが、それは、典型的な性格の不一致の場合で、現実には、諸々の要素が絡み合っています。あまり家事事件を経験したことのない弁護士さんが、自信満々に「別居期間が不足しているから離婚できない」、あるいは「〇年経過したから離婚できる」みたいに発言しますが、そう単純ではありません。
では、どういう場合に離婚できるかというと、これは感覚的な直感で、場数を踏まなければわかりません。
それでも、最終的には判断が家裁の裁判官と異なることもあります。両代理人が、これは離婚だねと暗黙の了解があり、調停委員会も当然離婚だというときに、離婚は無理と裁判官から心証開示されたことも、その逆も、結構あります。
また、家裁の裁判官が自信を持って下した判断が、高裁で簡単にひっくり返ることも何度もあります。
これは、どちらかが間違えているというよりも、価値観の違いです。微妙な案件では、担当裁判官の価値観がかなり影響します。
ただ、高裁に行くと、大体が、代理人や調停委員の心証と一致する結論になることが多いですね。
配偶者の病気
- 配偶者が病気の場合、離婚出来ますか
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病気のうち、精神病に関しては民法に規定がありましたが、現在は、精神病に対する偏見だとして削除されました。
最高裁が、配偶者が強度の精神病の場合のケースですが「病者の今後の療養、生活等についてできる限りの具体的な方途を講じ、ある程度において、前途に、その方途の見込みのついた上でなければ、ただちに婚姻関係を廃絶することは不相当と認めて、離婚の請求は許さない」と判断していることから、配偶者が病気になっても、それだけでは、なかなか離婚できないと誤解されているようです。
しかし、看病を続けてきた配偶者が同時に仕事もして一家を支え、子供の世話もして、一人で全てを負担してきた場合などは、離婚が認められやすいでしょう。
逆に、配偶者が病気なのに別居して何もしなかった場合などは、悪意の遺棄とみなされ、いくら3年以上別居しましたといっても、離婚は認められないでしょう。
配偶者の病気の場合は、別居は悪意の遺棄となり、マイナスになる場合が多いです。
元東京家裁調停委員の視点
このあたりは、法理論というより、感性の問題です。よく頑張ったと思える当事者は離婚を積極的に進めるし、誠意のかけらもないと思われる当事者には離婚を抑制する方向ですすめます。配偶者が病気で苦しんでいるのに、自分は何の介護もせず遊びまわり、3年別居しました、さあ、離婚ですといっても、通りません。これは悪意の遺棄にあたります。
悪意の遺棄
- 私の留守中に妻が子どもを連れて逃亡しました。実子誘拐だし、同居義務に違反します。悪意の遺棄として離婚できないと思いますが。
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悪意の遺棄になりません。
配偶者(主に夫)が家に帰ると妻が子どもと一緒にどこかに逃げた、同居義務違反だ、実子誘拐だ、悪意の遺棄だという意見を述べる方がおられます。
しかし、配偶者との同居生活が耐えられないとして家を出ても、それは悪意の遺棄にはなりません。また、わが国は、世界的に特異な協議離婚制度を採用していますが、これは、当事者が対等な立場で協議できることが前提になっています。この対等な協議ができないとき、子供を連れて家を出るのは、協議離婚制度がもたらす当然の現象であり、原則として、実子誘拐になることもありません。諸外国に子連れ避難がないのは、協議離婚制度がないからです。
このような場合、実子誘拐を許すなとして、やたらと別居親をあおる弁護士がいますが、営業トークが含まれている場合もあるので注意してください。そもそも、こういう行為は、自滅行為です。冷静に、なぜ、家を出たのか、出ざるを得ない事情があったのではないかと考えることが大切です。
性格の不一致
- 性格の不一致を理由として離婚が可能ですか
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相当期間の別居が経過していれば、離婚が認められます。
離婚原因で圧倒的に多いのが、性格の不一致です。離婚事件では、互いにモラハラという用語が飛び交いますが、モラハラと性格の不一致は、重なり合う部分が多いです。
性格の不一致でも、一定期間の別居が経過していれば、もはや修復の可能性はなく、形骸化した婚姻を続ける意味は、ありません。性格の不一致そのものは離婚原因になりませんが、性格の不一致を理由に開始された別居が離婚原因となります。 一方、性格の不一致といっても、配偶者のモラハラ的傾向が強い場合、そのモラハラ傾向の強い配偶者が離婚を求める場合は、離婚のハードルは高くなり、そのモラハラ傾向の強い配偶者が離婚を求められる場合は、離婚のハードルは低くなります。
元東京家裁調停委員の視点
性格の不一致とモラハラとの境界線は、現実には、線引きが困難なケースが多く、モラハラは立証できないと言われますが、ただ、モラハラ傾向の非常に強い人は、調停を1回か2回、繰り返せばすぐにわかります。こういう方は、調停委員会の説得がききませんから、付き合うだけ時間の無駄。さっさと不調です。
問題は、こういうタイプの当事者に力量不足の弁護士が就いた場合。モラハラ配偶者から見た都合のいい世界をそのまま信じ込み、調停でも、自滅行為一直線となります。さすがに相手方代理人が子連れ避難をそそのかしたとは言わないけど、多いのが、避難した配偶者側の両親がそそのかしたという認識。軽はずみな行動で反省しているだろう、今回だけは許してやる、という認識。あと、警察がそそののかした、と真面目にいう弁護士もおられます。
性格の不一致2
- 性格の不一致で、一番多いのは何ですか
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金銭感覚と教育観です。
金銭感覚の違いも教育観の違いも、常識の範囲内なら、多様な価値観の尊重として性格の不一致で処理されます。相当期間の別居があるかという観点から離婚原因の有無を判断します。
しかし、金銭感覚の違いが度を超すと経済的DVになったり、浪費になったりします。また、教育熱心のあまり教育虐待に走ったり、逆に全く無関心で親としての責務を放棄しているとしか思えない場合もあります。このレベルは、性格の不一致ではなく、DV・モラハラ・育児放棄に分類されます。有責配偶者とみなされ、自ら離婚請求した場合は、有責配偶者として離婚請求を棄却され、逆に離婚請求されたときは簡単に離婚が認められます。
元東京家裁調停委員の視点
常識の範囲内か否かは、基準としてはあいまいですが、実際は、判断に迷うケースは、あまりありません。
問題は、金銭感覚も教育観も、調停委員会から見て明らかに常軌を逸しているのに、当事者は、そうは思わず、調停委員の「間違えた考え」を正そうと調停委員相手に「演説」が始まります。
この手の当事者は、説得するだけ時間の無駄です。調停委員会から、早期に調停打ち切りを言われたとき、どちらかが説得不能な当事者と調停委員会が考えているのです。
有責配偶者
- 有責配偶者からの離婚請求は認められますか
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最高裁3要件に該当しないかぎり、「離婚を認めることが相当でない」として信義則に反し、離婚が認められないのが原則です。
最高裁は、
① 保護を要する子供―未成熟子がいない
② 離婚しても配偶者を経済的に極端に破綻させない
③ 相当長期の別居期間がある場合
は、 有責配偶者でも離婚請求が認められるとしています。
このうち、裁判所は①を一番重視し、次いで②を重視します。これに対し、③は①②ほど重視されません。
未成熟子かどうかは、実体で判断し、18歳になったから未成熟子ではないとは言えません。
また、この3要件が絶対というわけではありません。最高裁が例示した3要件は、有責配偶者からの離婚請求が信義則に反しない一つの例であり、それ以外でも、信義則に反しない離婚請求なら認められます。
例えば、相手方が人格障害や性格異常であり、相手にも、かなりの原因が認められる場合です。妻が永年にわたり、仕事・家事・育児を一人で一手に引き受け、夫が何もしてこなかった場合なども、有責配偶者を理由とした離婚拒否は認められないでしょう。
元東京家裁調停委員の視点
有責配偶者も、相当長期の別居をし、子供が成熟すれば離婚できます。問題は、相当期間の別居とは何年かで、明確な線引きができません。裁判官による個人差も激しく、10年とか8年とか、いろいろいわれていますが、個々の案件で担当裁判官に意見を求めても、明確な回答を貰えることは少ないです。
復縁
- 互いが弁護士を立てて話しをしていながら復縁することはあるのでしょうか?
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ときどき、あります。
離婚すると宣言して別居したものの、夫婦間に小さな子供がいる場合、「子供のためにやはり復縁したい」というのは、相応にあります。
これに対し、熟年離婚の場合、夫婦間に子供がいない場合などは、復縁の可能性は低くなります。しかし、少数ながら、復縁する場合もあります。それは、別居が、不貞等の特定の原因による場合です。不貞で激怒し、離婚に踏み切る、裁判を起こす、しかし、事件の経過とともに怒りがおさまり、よりを戻すことになります。
逆に、性格の不一致、つまり、こまかな不満の積み重ねで離婚請求にいたった場合は、まずよりはもどりません。配偶者は、時間をかけて、しだいに離婚の意思を固めたもので、一時的な感情ではないからです。