慰謝料請求のご質問とアドバイス
- 離婚等で慰謝料が請求される場合は、どのような場合ですか?
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不貞と暴力です。
慰謝料が認められるのは、a、不貞 b、暴力 c、粗暴な言動 d、精神的圧迫 e、悪意の遺棄 f、経済的事情 g、子との交流阻害 h、犯罪行為 i、性的不調和の9類型です。
ただ、C以下は、基準が明確でなく、ほとんどが不貞か暴力です。C以下は、複合的に主張されます。
- 配偶者が不貞をするとどうなるの?
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離婚と慰謝料請求ができます。
夫婦は、互いに貞操義務があります。浮気をすることは、この貞操義務に違反することになります。 その結果、
① 不倫された配偶者は、他の配偶者に離婚請求できます。
逆に、不倫をした配偶者は、原則として、離婚請求が難しくなります。②不倫された配偶者は、不倫した配偶者と、不倫の相手方に対し慰謝料請求できます。
- 不貞を立証するための証拠には何が必要?
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疑わしい程度に立証できれば十分です。
世間で誤解されているのが、この点です。ズバリ、少なくともラブホテルに入るくらいの証拠が必要だ!と「誤解」されています。
しかし、それほど厳格な証明が要求されるわけではありません。当事務所では、高速道路の履歴証明と携帯電話の履歴だけで賠償請求を勝ち取ったことがあります。
逆に、興信所に頼むことは要注意です。興信所の手数料はきわめて高く、他方、慰謝料金額が意外と低いことから、興信所の手数料の方が賠償金より高くついたということは珍しくありません。具体的には、次の書類をできる限り集めて下さい。
①録音テープ
「配偶者は不貞を認めています」と安心しきって相談に来られる方がいますが、いざとなれば否認します。不貞を認めている会話を録音しましょう。不貞を認めていなくても、後日、録音した会話から矛盾を発見し、動かぬ証拠となることは珍しくありません。
②その他写真、メール、手帳、手紙、メモ、旅行やホテルの領収書等。
どの程度の証拠が必要かは、かなり経験が要求されます。手元にある証拠をできるだけ持参してください。
- 不貞を立証したら、いくら請求できるの?
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離婚や破綻に至った場合は、100~300万円、破綻していない場合は、50~100万円でしょう。
ポイントは、それによってどのような結果が生じたか、ということで、世間で言われているように不貞した期間とか、どちらが積極的だったかは、それほど決定的な要素ではありません。また賠償義務者の資力も関係ありません。 ただし、不貞当事者が、裁判所をだまそうとするような行動にでたとき、予想外の金額になります。
- 慰謝料で重視される点はなんですか
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破たんの有無、ついで子供、配偶者の生活力、婚姻期間です。
慰謝料算定にあたり、裁判所が一番見るのは、その不貞により、不貞された家族はどうなったかという点で、破綻した場合は賠償額が多額になり、破綻していない場合は低額になります。 これに子供の有無、婚姻期間等を総合的に考慮します。
婚姻期間が短く子供もいない夫婦の場合、家庭裁判所は、驚くほどクールです。 不誠実な態度をとると賠償金額は跳ね上がります。
- 不貞を理由とした慰謝料請求には2種類あると聞きましたが
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不貞して離婚原因を作った離婚自体慰謝料と、不貞行為による慰謝料請求の二種類です。
不貞して離婚原因を作った離婚自体慰謝料請求は、配偶者に対してのみ請求できます。この場合、離婚時から3年で消滅時効となります。
不貞による慰謝料は、配偶者と不貞の相手方に請求できます。この場合、不貞時から3年で消滅時効となります。
- 妻の不倫相手は、社会的地位があり、800万円を支払いたいと提示してきました。相場はずれの金額のようですが、受領しても構わないのでしょうか。
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恐喝・脅迫行為がない限り、受領してもかまいません。
示談では、相手方の社会的・個人的な立場や精神的タフネスから、あり得ないような金額で和解することがあります。 もちろん、「払わなければ会社や家族にばらすぞ」的な恐喝行為は犯罪になりますが、単に賠償請求しているだけなのに相手が任意に応じた場合は、相場はずれの金額でも、受領しても問題ありません。
- 不貞を立証しても賠償金をもらえない場合があるの?
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あります。
次の場合には、不貞を立証できても、慰謝料は請求できません。 逆にいえば、次のケースに該当すると立証できたら、慰謝料請求を拒否できます。
①不貞相手が、既婚者であることを知らなかった場合
独身だと思っていたら実は結婚していた場合は、慰謝料請求できません。この抗弁、よく出されるんですよね。もちろん、不貞をした配偶者には、慰謝料請求できます。
②婚姻関係破綻後の不貞
この抗弁もよく出されます。
婚姻関係がすでに破綻していた場合には、その不貞によって婚姻関係を破綻させたとは言えないので、慰謝料を請求できません。
最高裁平成8年3月26日判決として有名な判決で、この種の事件で、必ず、被告側の抗弁として主張されます。
問題は、いつをもって破綻したかと考えるかで、別居=破綻とはなりませんし、離婚原因としての破綻とも基準が違います。
むしろ、慰謝料を認めるべき事案だなと思えば破綻前の不貞だとし、認めるべきでないと判断すれば、すでに破綻していたと認定します。
注意!
別居=破綻ではない。 「別居した後の不貞はいいんだ」という都市伝説が流れていますが、これは明白な誤解。また、ここでいう「破綻」とは、「離婚原因としての破綻」とも異なると一部では言われていますが、これも、根拠がありません。
③不貞配偶者の行為がレイプに近いケースの場合
配偶者に慰謝料請求できますが、被害者にはできません。
④ 権利濫用にあたる場合
これは、あまり注目されていませんが、最高裁の平成8年判決で、不貞された妻に、あまりにも身勝手な行為があったとして、請求棄却という判例があります。レアケースですが、こういう例もあるということです。
- 不倫した夫と離婚が和解で成立し、相当多額な金員を獲得しました。不倫した相手にも慰謝料は請求できますか?
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夫から慰謝料全額の弁済をしてもらったら、請求できません。
不貞を理由として慰謝料を請求する場合は、配偶者に対してばかりか、不貞の相手方に対しても請求できます。
不貞した配偶者と不貞の相手方の関係は、法律的には、共同不法行為者となり、不真正連帯債務者という関係になります。
不真正連帯債務者の場合は、一人が「弁済」すれば、他方は、賠償額が、その分だけ減額されます。しかし、一人が慰謝料を「免除」されても、その効果は、他方には及びません。
例えば、不貞した配偶者が不貞した慰謝料として100万円支払った場合、それが全額支払ったものなら、不貞の相手方は支払う必要はありませんが、慰謝料全額200万円のうち100万円を支払い、残り100万円を免除した場合は、不貞の相手方には、残金100万円を支払う義務があります。