パーソナリティ障害のご相談
パーソナリティ障害と家庭問題
家庭問題を扱っていると、理解しがたい行動をとる当事者に出会います。その方たちも、日常生活は、何ともないのですが、自分が家庭問題の当事者になると、普段は隠れている人の個性が増幅されてしまうのでしょう。
その個性は、医学的にパーソナリティ障害に近い行動をとるため、相手型当事者は、「配偶者は○○障害だ」と決めつけてしまいますが、治療が必要な障害というレベルに達している場合は、ほとんどありません。多くの場合は、問題当事者のパーソナリティの「傾向」にとどまります。
また、アメリカ精神医学会の診断基準である DSMを使い、勝手に配偶者は○○障害だと主張する当事者がいますが、素人に診断基準へのあてはめは無理です。
弊所は、この観点から下記書籍を出版しています。
攻撃せずにはいられないパーソナリティとリーガルハラスメント
最近の問題として、離婚請求されている配偶者からの執拗なリーガルハラスメント問題があります。
多くは、子供がまだ幼く親子共々精神的に不分離の状態のとき、突然、配偶者に子供連れて逃亡をされた当事者の一部にみられる現象です。
突然子供を失えば、大変な喪失感を感ずるのは当然ですが、一部の人は、そこから、相手や相手の代理人、担当裁判官、調停委員などに猛烈な攻撃を開始します。SNS上で実名を挙げて非難する、実子誘拐として相手や代理人を刑告訴する、代理人に繰り返し懲戒申立をする、裁判官の実名や顔写真をネットにさらし、国会に弾劾の申立てをする、等々。支援措置を行った自治体を攻撃する場合さえあります。
これらは、いわゆる「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」の持ち主で、その延長線上に、無意味な法的手続きを繰り返し行うリーガルハラスメント問題が生じます。
これらの「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」の方たちは、攻撃していないとストレスが溜まりから精神のバランスが保てない人達です。その原因については、自己愛性だとか、境界性だとか、いろいろ言われていますが、いずれにせよ、このような「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」の持ち主は、監護者はもちろん、直接的親子交流の当事者としても不適格なことは明らかなことから、ことごとく請求が棄却されます。
離婚を求めると自殺をほのめかす依存性パーソナリティ離婚を求めたら、離婚なら自殺するといわれ、怖くて離婚に踏み切れないという相談者が時々います。
以前、離婚調停事件で、夫から離婚請求された妻が、調停室や控室で「私は、このままでは最後は孤独死になる」「誰も気づかれないまま死んでいく」と泣いたり叫んだりしていたケースに遭遇したこともあります。
その原因に依存性パーソナリティ障害があります。
依存性パーソナリティ障害とは、要するに「見捨てられることに対する不安感が病的なレベルで強い人」です。
実は、境界性パーソナリティ障害・演技性パーソナリティ障害の場合も、同様の症状が出ます。これらの障害との区別は、依存性パーソナリティ障害の場合、新しく依存できる人が現れれば、態度が変わってしまうことです。「離婚するなら自殺する」と騒いでいても、次の人が現れると手のひらを返したように「早く離婚したい」となる。
離婚を求められた配偶者が自殺をほのめかしたら、依存性パーソナリティの傾向があることは確かでしょう。ただ、それは病的で治療を要する「障害」というレベルに達している場合は、ほとんどありません。
こういう場合は、これが一番良い方法だという解決策はありません。ただ、個人的な経験に基づいて言わせてもらうと、「自殺する」と予告していた配偶者が実際に自殺した経験は、今まで、一度もありません。
自殺をほのめかしたとか、自殺未遂とか、離婚訴訟での婚姻破綻の認定、親権者としての適格性の判断にあたって重大な判断要素になるし、自殺を予告するような行動に出ていることは、重大な離婚ポイントになります。
元東京家裁調停委員の視点から
調停をしていると、時々、配偶者は○○パーソナリティ障害だ、と決めつける人に出くわしますが、素人には、そんな判断は無理です。DSMの診断基準は、かなり主観的で、それは、多数の患者を診てきた精神科医でさえ、医師により、判断が異なります。
ただ、調停を続けていると、そういうタイプ、傾向は、おのずとわかります。
大事なのは、○○障害か否かではなく、どうして、そういう行動をとるのかの確認です。
一番多いのが、夫側が「うちの妻は、すぐに切れる。絶対に境界性パーソナリティ障害だ」という意見です。夫側からは、そう見えるのでしょうが、かなりの割合で、夫に自己愛性パーソナリティ傾向があり、夫からネチネチと精神的に追い詰められてしまった妻が、身を守ろうとして、切れるということが多いのです。こういう場合は、別居から時間が経過すると、しだいに落ち着いてきます。
また妻側から「夫のモラハラはひどい。夫は絶対に自己愛性パーソナリティ障害だ」という意見も、結構多いですね。しかし、調停を続けていくと、妻側があまりにも自分勝手という場合が少なくありません。
最近問題になっているのが、調停委員や裁判官も攻撃する「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」です。ネット上で調停委員や裁判官の実名を挙げて攻撃することから、このタイプには、相当注意しています。また、こういうタイプには、往々にして、代理人も超個性的な方が就いて、超個性的な主張を展開します。
「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」の当事者は、調停自体が無意味ですから、できるだけ早く不調にしますが、気の弱い調停委員だと、なかなか不調にできず、無意味な調停を繰り返すことも行われます。