DV・モラハラのご相談

現代のDV・モラハラ加害者の特徴

DV・モラハラ加害者は、自己愛性パーソナリティ傾向から、夫婦間の「考え方の違い」を「自分が正しく相手が間違えている」と認識します。そのため、対等であるべき夫婦関係が、いつの間にか上下関係に代わり、下位の配偶者は、ひたすら忍従の日々を送ることになりますが、上位の配偶者である加害者は、これを仲睦まじい夫婦になった、楽しい家族生活だと認識します。

忍耐が限度に達し、下位の配偶者が逃亡すると、上位の配偶者は、義両親や金儲け主義の弁護士が仕組んだ罠だ、なんとしても、配偶者を助けださなければならないと考えます。

DV・モラハラの原因は、その自己愛性パーソナリティ傾向にあることが多く、その点を認識しないと、真の解決策は見出せません、。

弊所は、その観点から、弁護士や裁判所、DVモラハラ児童虐待問題に携わる方々向けの実践的手引書として、下記書籍を出版しています。この書籍は、弁護士と医師がパーソナリティ障害、ADHDの観点から、DV・モラハラを分析し、その法的な対策を述べるもので、おそらく全国でも唯一の書籍です。
・書籍「心の問題と家族の法律相談 離婚・親権・面会交流・DV・モラハラ・虐待・ストーカー

元東京家裁調停委員の視点

DV・モラハラは、立証しにくいと言われますが、調停で協議すると、この人にはDV・モラハラ傾向があるなというのは、大体、わかります。

まず家族生活に対する認識がまるで違います。被害者が、いかに日々の生活がつらかったかを涙ながらに話すのに対し、加害者は、家族みんなで仲良くしていたといいます。嘘をついているのではなく、本当にそう認識しているのです。どの離婚事件でも、この「落差」はありますが、DV・モラハラの場合は、その「落差」が極端です。加害者には、被害者の逃亡も、築き上げてきた生活を捨てするしかなかったほど、被害者はつらかったという認識ができず、「わがまま」とか「義父母や弁護士にそそのかされた」としか認識できません。 このタイプは、調停委員会の説得に応じないどころか、逆に調停委員を説得しようと延々と演説を繰り広げ、時には紙爆弾といわれる、大量の主張書面をだしてきます。調停は、調停委員会の考えを何としても変更させたい加害者側の「演説」を聞くことで終わります。
経験豊かな弁護士は、相談段階で、このタイプの相談者から依頼を受けることを避けます。いずれは、その攻撃が代理人に向いてくることを知っているからです。その結果、問題当事者ほど、代理人が就かないか、就いても超個性的な弁護士か経験不足の弁護士が就き、調停は、益々難航します。
中には、相手の代理人を「金儲けのため家庭を壊した」とSNSに投稿したり、さらには、調停委員の実名を挙げて攻撃します。このタイプは、精神が非常に脆弱で、相手を攻撃しないとストレスがたまり心のバランスが保てないのです。「攻撃せずにはいられないパーソナリティ」です。
DV・モラハラ傾向の強い人とわかったら、さっさと不調にします。ただ、加害者は、「わがままな配偶者を調停委員がなぜ説得しない。」と、不調にも抵抗するので、気の弱い調停委員だと延々と不毛な調停が繰り返されます。

DV・モラハラ問題のご質問とアドバイスもご参照ください。

わが国のDV被害者保護の特徴

DVについての被害者保護には、加害者を被害者から隔離して被害者を保護するという加害者隔離型と、被害者の逃亡を助ける被害者逃亡援助型があります。
ほとんどの先進国は、離婚を許可制としている関係で加害者隔離型を採用していますが、わが国では、協議離婚制度という特異な制度を採用しているため、逃亡援助型にならざるを得ません。
被害者逃亡援助型のわが国で、被害者保護の中心をなすのは、支援措置で、それを補強するのが、ストーカー規制法による警告制度であり、DV保護法による保護命令です。保護命令に退去命令がありますが、これは、逃亡の準備をするための制度です。
DV被害者に対する国のスタンスは、二人で話しあうことができないからと言って国は助けませんよ、しかし、逃げるのは助けましょう、というものです。
欧米と異なり、わが国では、被害者の方は、弁護士や警察を頼りに自ら守るしかないのです。

DV被害者の方へのアドバイス

(1)DVであることを自覚し、逃亡を準備する。
DV被害に遭われている方の特徴として、DVやモラハラがひどいときは、「自分も反省すべき点がある」と思い込んでしまう方が非常に多いですね。別居しさえすれば、精神状態がやがては正常になり、非は全面的に相手にあることを自覚できますが、同居していて、日常的に支配服従関係がある状態では、被害者は、この自覚ができなくなるばかりか、悪いのは自分だと思い込んでしまっています。
夫婦間に上下関係ができていませんか?もしあなたが、配偶者に面と向かって反論できない場合は、夫婦間に上下関係ができており、DV・モラハラの被害者です。
上下関係のある夫婦間では、正常な離婚協議ができません。離婚協議は、夫婦が対等な話し合いができることが前提になっています。対等な話し合いを実現するためには、まず、相手の支配から抜け出すこと、逃亡の準備が必要です。

(2)持ち出す際に用意するもの
支配服従関係から逃げるために家を出る際、持ち出すものは以下の通りです。
①今後の生活のための当面の資金(半分までは問題ありません)
②スマホと充電器
③自分や子ども名義のキャッシュカード、クレジットカード類
持ち出せなかった場合は「紛失届」を出し、再発行・再印鑑登録をし、相手方が勝手に引き出せないようにします。
④自分や子ども名義の健康保険証
⑤運転免許証・パスポート等の身分証明証
⑥母子手帳
⑦常備薬・処方薬
⑧DV・モラハラ・不貞等の証拠類(自分で書いてた日記、ボイスレコーダー、診断書、相談記録の書類等)

(3)配偶者暴力相談支援センター・警察への相談
わが国は、DV保護について、被害者逃亡支援型をとっているため、何もしなくても、国家があなたを守ってくれるわけではありません。自ら現在の生活を捨てて逃亡するしかありません。
逃亡する前に、必ず、配偶者暴力相談支援センター警察での相談してください。相談先がわからない場合は、「#8008」(はれれば)に電話をかけると、最寄りの支援センターに自動転送され、案内を受けることができます。また警察も、生活安全課がDV相談を受け付けているし、警察相談専用電話(#9110)で相談をすることもできます。
これらの相談は、単なる相談ではありません。その相談が記録に残され、今後の支援措置やDV保護命令での重要な資料になります。それ以外の機関での相談は、今後の法的手続きの資料になりません。
また、警察に相談した際は、あわせて警察の110番緊急通報者登録制度に登録しておきましょう。その登録した番号から110番通報された場合、警察が迅速に動いてくれます。

(4)支援措置
相談後、住民票や戸籍の附票のある市区町村役場に出向いて、支援措置を受けます。この支援措置を受ければ、住民票の移動先を関係者に非開示にしてくれるし、加害者が警察に捜索願を出しても受理しなくなります。
手続きは簡単で、役場に置いてある「住民基本台帳事務における支援措置申出書」に必要事項を記入して提出するだけです。役所より、配偶者暴力相談支援センター等に相談内容確認し、申出が適正なものと確認すれば、1年単位で、支援措置を行ってくれます。
ただ、現実には、窓口で誤って開示してしまうミスがかなりあるので、その際の住所は、実際の住所ではなく、実家等にしておいたほうがいいでしょう。

(5)宿泊先の確保
逃亡援助型のわが国では、行き場のない被害者のための施設としてシェルターが用意されています。配偶者暴力相談支援センター、警察での相談を通じて、紹介してもらうことができます。入居可能期間は、シェルターにより異なりますが、2週間程度が多いようです。ここでは、就職支援や生活保護手続きのアドバイスもしてくれます。

シェルターについては「監獄みたい」というクレームがネットなどに記載されていますが、普通に規則的な生活を送ることのできる人には、何の問題もありません。ただ、その期間、弁護士も含めて外界との連絡が全くとれなくなります。子供も学校にも行けなくなります。安全な場所が他に確保できるなら、その場所の方がいいかもしれません。
民間シェルターへの入居を希望する場合、ネットで検索して運営団体に直接コンタクトをとる方法もあります。
シェルターを出た後は「母子生活支援施設」に入居することが多いのですが、母子生活支援施設に空きが無いような場合は、自治体が管轄する「一時宿泊所」というマンションのような施設に3ヶ月入居して、空きを待つか、空きがない場合は、都営団地等に引っ越すことになります。
なお、シェルターから服や洗面用具などはもらえるし、生活に必要な最低限の家具・家電は備え付けてあります。ただ、風呂・トイレは、共同です。

(6)防犯指導(警察官職務執行法5)
配偶者の異様なつきまといに禁止命令や保護命令をとる前に、危険防止などの防犯指導として、担当刑事が、電話等で加害者に事実上の警告等を行うという簡便な方法をとることもあります。ストーカー行為が反復継続されていなくとも、可能です。加害配偶者の多くは、「弁護士や義父母に騙された配偶者を助けなければ」と考えて行動しており、相手を恐怖させているという認識がありません。警察からの電話に驚いて、多くは、それでストーカー行為が終了します。
しかし、例外的に、それに反発した加害者が逆に行動をエスカレートさせることもあります。
また、警察において、一時避難先への搬送、GPS機能付き携帯電話機やビデオカメラへの貸し出しを行ってくれることもあります。避難場所が確保できているが、そこまで一人で行くのがこわいという場合は、警察に頼んでみたほうがいいでしょう。

(7)ストーカー規制法とDV保護命令
逃亡した後も、執拗に追いかけまわすときは、ストーカー規制法とDV保護命令で身を守ります。
ストーカー規制法は、「追いかけまわす行為」を禁止するものですが、相手から拒まれているのに、LINEやメールを送り続ける、SNSやブログにメッセージを送信したり、書き込んだりすることを続ける行為も規制対象になります。
このような「つきまとい」行為があるときは、警察に頼んで、禁止命令を出してもらいましょう。禁止命令書が相手に送達されます。この命令に違反した場合は、懲役刑や罰金という刑事罰が科せられます。
DV保護命令は、DV保護法に規定された制度で、自分や家族に接近することを禁ずる民事上の保全処分です。これに違反すると2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金という刑事罰が科されます。ストーカー規制法と異なり、裁判所に呼び出され、審尋を受け、命令書が本人に交付されることから、かなり効果的です。ただ、このDV保護法は、いわゆるDVの中でも、極めて悪質な一部のDVのみを対象としているため、ここから漏れるDVは、ストーカー規制法で対処するしかありません。