DV・モラハラ問題のご質問とアドバイス
- DV・モラハラと性格の不一致の違いは
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原因が、夫婦関係の上下関係から生ずるか否かです。
考え方の違いから離婚に至る場合、双方が共同関係を維持できないほどの不快を感じますが、そのような「不快」は、DVでもモラハラでもありません。
しかし、夫婦間に上下関係ができてしまい、上位の配偶者からの指示によって不快を感じた場合は、DV・モラハラです。
たとえば、妻の金銭管理がなってないとして、夫が一方的に金銭管理をするようになれば、それは経済的DVです。しかし、お金の使い方をめぐって互いに罵り合えば、それは夫婦喧嘩であり、DV・モラハラではありません。
- DV加害者は、どういうタイプが多いですか?
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粗暴なタイプか自信過剰なタイプです。
DVの配偶者は、二つのタイプがあります。
一つは、性格が粗暴で反社会性パーソナリティの傾向が強い人です。このタイプの人は絶えず周囲と衝突し転職を繰り返したりします。反社会性パーソナリティタイプの人は、DVは、肉体的暴力となってあらわれます。
もう一つは、自信過剰なタイプで自己愛性パーソナリティの傾向が強い人です。このタイプの人は、逆に周囲を組織化し、その指導的立場にたつこともあります。自己愛性パーソナリティタイプの人は、経済的DV、精神的DVとなってあらわれます。
対照的なタイプですが、我々弁護士が直面するタイプは、圧倒的に自己愛性タイプです。この両者が混在している場合もあります。
反社会性パーソナリティタイプも一定数いるのでしょうが、民事事件になる前に刑事事件で問題化します。
両者の混合型も多く、妻を熱心に「指導」しようとして、手を出す場合もあります。
- DV加害者を矯正させる方法はありますか?
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被害者の「怯え」を認識できれば矯正可能ですが、ほぼ不可能です。
離婚事件では、離婚請求する側とされる側で認識が食い違うのが一般的ですが、
DV案件では、その「食い違い」が極端です。
被害者は、すごく怯えているのですが、加害者には、いくらそれを説明しても絶対に理解してくれません。加害者には、被害者と喧嘩もせずに過ごしてきた日々を、被害者の忍従の日々とはとらえることはできず、円満な夫婦関係と認識しています。そして、この認識を変えることはできません。
「楽しかった日々」なら、なぜ、配偶者は逃亡したのか?加害者は、実家が子どもと孫を取り戻すためだとか、金儲け主義の弁護士が唆したとか、もともと精神が未熟で我儘で飛び出したとか、が真の理由だと考えます。そして、やれやれ、手に負えない、やはり、私が守ってやらなければと考えます。
このタイプの人に、弁護士や調停委員が、その考えは間違えているといくら説明しても聞き入れません。「配偶者のことを一番知っているのはこの私だ」。それどころか、攻撃の対象を弁護士や調停委員にむけてきます。
- 反社会性パーソナリティの傾向が強い夫とは、どういうタイプですか?
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妻の権利や感情に極めて鈍感な人です。
反社会性パーソナリティとは、他者の権利や感情を軽視するパーソナリティで、「他者を支配して奪い取ることを何とも思わず、所有欲や支配欲・猜疑心が非常に強く、目的達成のためには手段を選ばない」という配偶者です。それが病的なレベルに達した場合が反社会性パーソナリティ障がいです。男性に圧倒的に多いパーソナリティです。
このタイプは、ともかく妻や家族を支配したがります。妻や子供の人格とか人権にはまるで無関心。というよりも、完全に無視。なかには、自分は色々理屈をつけて働かず、金をむしりとるヒモになったり、妻を完全に支配下に置いて自分の意のままに動かそうとします。妻が逃げ出すと執拗に逃げた妻を追いかけます。最悪の場合は、要求がかなわないとみるや、妻や親族、さらには弁護士にまで暴力をふるい、最悪の場合は殺人事件になります。もちろん、離婚は断固拒否します。パーソナリティが病んでいるため、自分の行動の異常さが理解できないのです。ここまで来ると、反社会性パーソナリティ障がいで、パーソナリティが完全に病んでいると考えるよりほかありません。
ただ、このタイプは、年々少なくなっています。
- 夫が反社会性パーソナリティ障がいか否かは、どのように判断するのですか?
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DSM‐5による反社会性パーソナリティ障がい(Anti-social Personality Disorder)により診断します。
米国精神医学会診断基準によれば、診断基準は、以下の通りです。(ただし、この診断へのあてはめは非情に難しく、素人では無理です。)
A.他人の権利を無視し侵害する広範な様式で、15歳以上で起こっており、以下のうち3つ(またはそれ以上)によって示される。
1、法にかなった行動という点で社会的規範に適合しないこと。これは逮捕の原因になる行為を繰り返し行うことで示される。
2、虚偽性、これは繰り返し嘘をつくこと、偽名を使うこと、または自分の利益や快楽のために人をだますことによって示される。衝動性、または将来の計画を立てられないこと。
3、いらだたしさおよび攻撃性、これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。自分または他人の安全を考えない無謀さ。
4、一貫して無責任であること。これは仕事を安定して続けられない、または経済的な義務を果たさない、ということを繰り返すことによって示される。
5、良心の呵責の欠如、これは他人を傷つけたり、いじめたり、または他人のものを盗んだりしたことに無関心であったり、これを正当化したりすることによって示される。B. その人は少なくとも18歳以上である。
C. 15歳以前に発症した素行症の証拠がある。
D. 反社会的な行為が起こるのは、統合失調症や双極性障害の経過中のみではない。
- 夫が暴力的なDVの場合、どうすればいいですか?
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弁護士にその後の処理を頼むと同時に、ともかく避難しましょう。
わが国は、DV加害者を被害者から隔離して保護するという欧米のような制度にはなっておらず、被害者が逃亡し自力で自分や子供を守りなさい、ただ、逃亡の手助けだけはしてあげましょう、という制度になっています。
ですから、被害者の方は、自ら守るしかありません。その逃亡方法は、DV被害者の方へのアドバイスに記されているとおりです。
現実には、怖くて逃亡できない人が少なくありません。「逃げても追いかけてくる」「自分が逃げたら家族に何をされるかわからない」等々。そのまま相談を受けて、暴力男のところに戻ることもあるし、法的な手続きの途中で事件を取り下げることもあります。
やはり、周囲の精神的支援が大切です。
- 夫は、言葉の暴力がひどく、精神的に限界です。しかし、夫は、有能で良心的な医師として患者から信頼されているため、周囲に相談しても、なかなか信じてもらえません。
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社会的評価の高い方々に、意外とDVが多いのです。
典型的な自己愛性パーソナリティタイプによるDVですね。弊所で扱う案件では、反社会的パーソナリティタイプよりは、このタイプのDVのほうが遙かに多いです。高学歴・高地位・高収入の方々、あるいは熱心に社会活動に没頭する方々で、自分に対する自信が非情に強い方々です。このパーソナリティの方々は、「自分と考え方が異なる=相手が間違えている」と思いこみます。それは、妻との関係では、「妻の考えと自分の考えは違う→妻は間違えている→妻は自分より劣っている→妻を教育指導する必要がある→指導する=精神的・経済的DV」という流れを辿ることになります。
このタイプは、「自ら省みてなおくんば、千万人といえども我行かん」(孟子)
というタイプなので、社会的には成功することもありますが、家庭生活では、それがマイナスになります。
こういうタイプは、自信過剰で、自己のDV性を自覚できません。妻が問題にするパーソナリティが、社会では「立派な人格者だ」と賞賛されているからです。 反社会性パーソナリティタイプよりも、さらに面倒です。
- Q7のケースで、精神的DVを理由として離婚できますか?
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精神的DVが認められるなら離婚できます。
肉体的な暴力があれば離婚できるのは当然として、精神的DVも、支配服従の関係がある以上、離婚出来ます。
ただし、客観的に見て、精神的DVというよりは、単なる夫婦喧嘩の口論となると、裁判所は性格の不一致と考え、普通の離婚事件として扱います。
また肉体的暴力の場合は、慰謝料は認められますが、精神的DVとなると、性格の不一致との境界線が曖昧だし、性格が悪いということ自体は不法行為にはならないので、なかなか認められません。
性格の不一致か精神的DVかは、当事者の行動やメール等から、支配服従の関係があったかどうか総合的に判断します。
- 不貞をし、以来、夫から執拗に暴力を受けています。DVを理由として離婚出来ますか?
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できます。何の問題もありません。
配偶者暴力が妻の不貞を契機とすることはよくあります。しかし、不貞をしたからと言ってDVをしてよいことにはなりません。妻の不貞に対する抗議のレベルを超えてDVになるときは、離婚出来ます。
ただし、それにより不貞の違法性がなくなるわけではなく、不貞の慰謝料も支払うことになります。
- DVを証明するには何が必要ですか?
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客観的な証拠があるのが理想ですが、なくても構いません。
DVは、DV保護命令のような短期決戦では、物証が必要となりますが、調停・訴訟の場合は、その言動から、おのずとわかります。主張書面自体が、モラハラ感満載です。また、訴訟・調停前の当事者間でのLINEや手紙、メールのやりとりからも、相手のDV・モラハラ体質がわかります。DV・モラハラを理由とする離婚請求は、以外と簡単です。
しかし、DVによる慰謝料請求となると、別問題です。モラハラ的としても、性格が悪いということを理由として賠償請求させるべきかについては、裁判官は躊躇するでしょう。少なくとも、身体や精神に、何らかの障害が発生していることが必要で、「怖い」とか「吐き気がする」というレベルでは、なかなか「損害」が認定できません。そうなると、やはり客観的な証拠が必要となります。
医師の診断書があれば理想ですが、それがなくても、警察での相談や配偶者暴力相談支援センター・女性相談支援センターに相談していた際の記録も開示してもらえばDVの有力な証拠になります。
ただ、慰謝料請求をするとなると訴訟が長期化します。認められる金額を考えると、慰謝料請求は控えたほうがよいか、弁護士と相談しましょう。
- 言葉の暴力、精神的虐待を理由とした慰謝料請求を求めたいのですが
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難しいケースが多いです。
平成25年度の東京家裁の判例を統計的に整理すると、言葉の暴力とか精神的圧迫等の精神的虐待を理由とした慰謝料請求の認容率は13%程度(平均40%)であり、認容平均額は100万円(平均150万円)程度と低くなっています。 請求が棄却されるケースは、客観的な資料がなく、言葉の暴力や精神的圧迫がそもそも認定できない場合、そもそも慰謝料が発生するほどの暴言、精神的DVではない場合ありますが、一番多いのが精神的DVまがいの言動はあるが、夫婦双方に見られる場合です。
- 夫が暴力をふるったので警察が逮捕してくれました。しかし、周囲は、円満に離婚するために告訴しない方がいいといっています。
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告訴すべきです。加害者が自己のDVをさらに認識できなくなります。
DV被害者である妻が警察に被害を訴えると警察は必ず「告訴するか、しないか」を問うてきます。告訴しないとする妻の方が多いのですが、告訴しないことについて、被害者と加害者の認識は大きく食い違っています。
[告訴しない妻の認識]
被害者の妻は、「逮捕されて反省くらいはしている。ここで許してやれば、離婚には素直に応じてくれるだろう。今後のことを考えると、あまり追い詰めない方がいい。」と考えます。
[加害者の認識]
ところが加害者の考えは180度違います。加害者の考えは以下の通りです。①夫婦仲は良かった。(←支配服従関係が成立していたため、円満そうに見えていたにすぎないのだが、このことを説明しても、ほぼ全員認識できない)
②妻は、本当は復縁したいのだが、周囲(両親、弁護士、警察等)が、妻をそそのかして、復縁を阻止している。
③しかし、さすがに妻も、告訴まではやりすぎと反省し、告訴しなかったのだろう。つまり、加害者の夫は、被害者が刑事手続きを取らなかったことを、「自分にDVの冤罪を科した反省と謝罪」と受け取ります。妻の復縁希望の意思の兆候と受け止めてしまうのです。少なくとも、告訴しなかったことに対する感謝の気持ちを持つ者はいません。こういう状況で、刑事告訴をしないと、加害者には、「妻は本当は復縁したいんだ」という誤ったシグナルを与えることになります。
DV被害者が、今後の協議を円満に話し合うために被害届を出さず、あるいは告訴しないということは、ほとんどの場合、逆効果になります。
- DVだと保護命令がもらえるそうですが、どのようなものですか?
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裁判所から加害者に対して発令されるもので、①接近禁止命令②退去命令③電話等禁止命令④被害者の子への接近禁止命令⑤被害者の親族その他被害者と社会生活において密接な関係を有する者への禁止命令があります。
詳細は、以下の[DV保護命令QA]をご覧下さい。
DV保護命令Q&A
- DV保護法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)の規定するDVと同法が対象としているDVは、範囲が違いますか
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全く違います。
DV保護法は、第一条で、DVについて、「配偶者からの身体に対する暴力」に加えて、「これに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動」と定義し、精神的・経済的・性的DV等を幅広く含めています。
しかし、保護命令となると、その対象が大きく絞られます。「配偶者からの身体に対する暴力又は生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知してする脅迫」のうち、「その生命又は心身に重大な危害を受けるおそれが大きい」場合に限定され、しかも、「更なる」とあることから、将来再び脅迫行為は行われる恐れが高いことも必要です。
例えば、うつ病、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、適応障害、不安障害、身体化障害等のレベルが必要となります(内閣府「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等のための施策に関する基本的な方針」)。モラハラ行為による恐怖感・嫌悪感等の感情レベルでは無理です。
精神的DVを理由とする保護命令は、現実には、非常にハードルが高いのが現実です。
ただ、保護命令は無理でも、接見禁止等の一般的な仮処分は可能です。
- いきなりDV保護命令の申し立てができますか?
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できません。
DV保護命令を申し立てるには、
①配偶者暴力相談支援センターに相談に行く。
②警察(できれば生活安全課)に相談に行く。
③公証人の面前で陳述書の記載が真実であることを宣誓した宣誓供述書を作製する。
①と②の場合は、相談したことを申立書に記載し、
③の場合は、申立書に宣誓供述書を添付する。ことが必要です。一般的には①か②が多いです。
- 相手がDV保護命令を無視したらどうなりますか?
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刑事罰を受けます
民事判決の命令を無視しても刑事罰を受けることはありませんが、保護命令だけは、刑事罰の対象になり、逮捕・勾留されます。法定刑は、2年以下の拘禁刑又は200万円以下の罰金です。この刑事罰は、命令無視の場合は、ほぼ発動されます。
- 被害者が未成年の場合、被害者がDV保護命令を申し立てることはできますか?
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できません。
DV保護命令は、その性質に反しない限り、民事訴訟法の規定を準用する(DV法21条)から、法定代理人が申し立てることになります。
- 相手に住所を知られたくない場合はどうすればよいですか?
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現実の居住地を記載する必要はありません。
本来は、現実の居住地を記載するのが原則ですが、DV関連事件は、住民票上の住所地、あるいは相手方との最後の住所地でもよいことになっています。
- 恋人からのDVにも保護命令がもらえますか?
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もらえます。
ただし、「生活の本拠を共にする」「デートDV」に限られます。
自分がデートDVの被害者かどうかのチェックポイントを以下に記載しておきます。
□異性と話すだけで怒られる、不機嫌になる。
□同性の友人との交流も、厳しく制限される。
□自分の行動をいつも監視・監督され、束縛されている。
□相手は友人が極端に少ない。
□暴力をふるう。
□性的な行為を強制する。
□暴力はお前のせいだと責任転換される、それで自分のせいだと悩む。
□相手からの連絡の対応が遅れるだけで、相手が怒る。
- 被害者の子どもや親族への接見禁止命令を単独でできますか?
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できません。
あくまでも被害者本人への接見禁止を確保するために付随する制度として、被害者への子どもや親族への接見禁止命令が認められています。電話等禁止命令も同様です。
なお、「子供への接見禁止命令」は子の連れ去りを防止するためのものですから、すでに成人した子や、別居している子は、「子供への接見禁止命令」の対象から外れます。ただし、成人した子や、別居している子も、親族への接見禁止命令の対象にはなります。
- 家から子供と逃げ出したが、家で子供と暮らしたい。DVの退去命令で、夫を家から追い出すことができますか?
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できません。
DV保護命令の退去命令は、あくまでも、何も持たず家を逃げ出した場合に、衣類等引越の準備をするために、その間、一時的に退去させる保護命令です。
その家に住みたいなら、財産分与の問題として処理するしかありません。
- 離婚後に暴力を受けた場合に、保護命令を申し立てることができますか?
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できません。
DV保護法10条1項本文によれば、DV保護命令は、あくまでも、夫婦関係継続中の行為を対象にしています。婚姻中に暴力を受け、離婚後も暴力を受けるおそれがある場合はともかく、婚姻中に暴力や脅迫がなく、離婚後に暴力があった場合は、DV保護は受けられません。この場合は、ストーカー法の警告、刑事告訴や接見禁止等の一般的な仮処分で対処することになります。
- 恋人と同棲していたが、別れたのち、暴力を受けた。DV保護命令を申し立てることができますか?
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できる場合とできない場合があります。
同棲中に暴力を受け、同棲解消後も暴力を受けたらDV保護命令は可能ですが、同棲中に暴力はなく、解消後に暴力があった場合は対象になりません。ただ、ストーカー法の警告、接見禁止等の一般的な仮処分は可能です。
- 暴力をふるう同棲相手の男性から逃げて実家に避難した。DV保護法は適用されますか?
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別居後相当期間を経過していない限り、できます。
婚姻関係・内縁関係がなくても、生活の本拠を共にする交際なら、DV保護法の対象になります。しかし、別居して相当期間が経過すれば、「生活の本拠を共にする」とは言えませんから、DV保護法の対象になりません。例えば、実家に逃げていたり、シェルターに緊急避難している場合は、DV保護法の対象になりますが、居住目的で別に部屋を借りて相当期間を経過している場合は、対象になりません。
- 恋人と同棲したが、すぐに暴力が始まり、翌日、実家に逃げました。DV保護法は適用されますか?
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できます。
「生活の本拠を共に」しているか否かは、物理的に決まるものではない。同棲して一日でも、「生活の本拠を共に」していると言えます。ただ、同棲期間が長いほど、「生活の本拠を共にする」と認められやすいと言えます。
逆に、住民票上は同一でも、同居の実態がないときは、DV保護法の対象になりません。
- 生活の本拠を共にしたことは、どのように立証すればよいでしょうか?
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それほど厳密な証拠は必要でありません。
ポイントは、婚姻関係において一般的に見られる共同生活と、どの程度、類似性があるかです。単なるルームシェアは除かれますが、将来の婚姻意志は不要です。 婚姻関係における住民票の記載、賃貸借名義(同居人に賃借人以外の名前が記載されている場合)、公共料金の支払い名義、同居していたときの写真や同居を前提としたメールのやりとり、本人や関係者の陳述書等で、総合的に認定できればよいでしょう。
- 同性同士の場合でも、「生活の本拠を共に」していると認められるか?
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不明です。
現在、同性婚を認めないのは違憲とするのが裁判の趨勢です。そう考えると、DV保護命令でも、同性であるというだけの理由で、保護の対象から外すというのは合理的理由がないとも言えます。ただ、この点は、明確ではありません。
- 「生活の本拠を共にする交際相手」の場合、交際の解消を申し出ただけで、DV保護命令を申し立てることができますか?
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できません。
婚姻関係にない男女で生活の本拠を共にする交際相手の場合、生活の本拠を共にする交際を現実に解消する必要があります。解消を申し出ただけでは、保護命令の対象になりません。
DV冤罪について
- DV冤罪ってよく聞きますが、かなり多いのですか?
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他のハラスメント(セクハラ・モラハラ)と同じ割合です。
セクハラ・パワハラ等のハラスメント事件には、必ず冤罪事件が紛れ込みます。DV・モラハラ案件もそうですが、その割合が特に高いという統計はありません。
しかし、なぜか一部の人がDV冤罪をことさらに強調します。
- 妻が申し立てたDV保護命令が棄却されました。これで私の冤罪は証明されたと考えていいでしょうか?
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DV保護命令却下=冤罪ではありません。保護命令の対象にならなかったというだけです。
また損害賠償請求棄却=冤罪でもありません。性格が悪いということは不法行為ではなく、「損害」が発生していることが必要ですが、多くの場合、目に見えない精神的な「損害」のため認定されないだけです。
DV保護命令は、DVのうち、ほんの一部しか保護対象にしていません。保護命令が棄却されても、DVがなかったという証拠にはなりません。
また支配服従関係があるだけで慰謝料請求が認められるわけではありません。
よく保護命令が出ていないからDVではないとか、慰謝料請求は棄却されたからモラハラではないことが明らかになったと主張する人がいますが、保護命令も慰謝料も、DV・モラハラのうちの一部しか対象にしていません。
- DV冤罪の男性は、どうすればよいのですか
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訴訟で自ずと明らかになります。
DV保護命令は、その性質上、1,2回の審理で判断するため、その精確性に限界があります。しかし、訴訟になると、おのずと冤罪が明らかになります。もし嘘をついて保護命令を貰った場合などは、相場を超えた慰謝料が認められます。
言い換えれば、虚偽DVが最後まで明らかにならないということは、まず、ありません。
一部に、暴力をふるわれてもいないのに演技する方がいますが、訴訟の過程で発覚するし、発覚した場合は、相応のペナルティーを受けることになります。