熟年離婚・卒婚のご質問とアドバイス
- 熟年離婚事件は、他の通常の離婚事件とはどう違うのですか
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離婚請求する側にとっては永年の蓄積、離婚請求される側にとっては青天の霹靂という特徴があります。
家族や夫婦に対する考え方が、昭和から現代までの間に大きく変化しているのに、いまだに昭和的思考方法から抜け出せない配偶者の言動が原因です。
離婚請求をする側の話を聞くと、本当によく耐えてきましたね、というケースが多いです。逆に、離婚請求される側の人の話をきくと、遊興することなく、家族のために、まじめに働いてきたのに、と同情する場合が多いです。熟年離婚は、価値観の対立という難しい問題を含んでいます。
- 熟年離婚請求でポイントとなる点は何ですか
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老後資金と住居の確保です。
格差社会の現実が、熟年離婚の場合、より強く反映されます。
離婚請求する側が専業主婦でも、夫が大企業の会社員として相応に働いていれば、退職金等の財産分与や年金分割で、老後資金をある程度確保できます。しかし、夫が、零細の自営業者だったり、中小零細企業が勤務先の場合は、老後資金の確保に限界があります。
- 永年、同居してきたので、相当長期の別居が必要になりませんか?
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他の離婚事件よりも特に長期の別居期間は要求されません。
熟年離婚に対する誤解の一つに、同居期間が長いので、別居期間も相当長期でなければならない、という誤解があります。
しかし、離婚原因としての別居の期間は、単に同居期間の物理的長さだけではなく、諸々の事情を考慮して決められます。熟年離婚の場合、未成熟子がいないこと、離婚請求者の余命があと何年かという問題があること、多くの場合、家族のために我慢に我慢を重ねてきた経緯から、他の離婚事件よりも、むしろハードルが低い場合が多いです。
- 夫の永年にわたるモラハラを離婚原因としても、立証できるでしょうか?
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多くの場合、立証できます。 妻からの離婚請求は、大部分が夫の精神的DV、モラハラです。話を聞くと、本当によく耐えてきたというケースが多いです。ただ、夫は、昭和時代の夫婦に対する考え方で凝り固まっているので、自分が時代からずれてしまっていることを認識できません。
離婚話を切り出したあとの夫からのLINEやメールは、たいてい、モラハラ感満載の文章が多いです。また、調停でも、モラハラ的発言を繰り返します。たいていは、モラハラであると立証できます。
- 妻の永年にわたるモラハラを離婚原因としても、立証できるでしょうか?
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多くの場合、立証できます。
少数ですが、夫からの離婚請求もあります。妻が、自分のことは棚に上げ、夫はこうでなければならない、と勝手に基準を決め、その基準に達しないことから、日々、夫を「指導」してきた場合です。
調停でも、「夫は本当に子供だ」「いつも注意しているのに無視する」というモラハラ感満載の発言を繰り返すので、すぐに、わかります。
ただ、この場合、妻自体が夫に愛想を尽かしている場合が多いので、離婚自体で揉めることはなく、むしろ、金銭面で揉めます。
- 熟年離婚では何が争点になりますか
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老後資金です。
老後の生活は、年金だけでは足りないとか、+2000万円が必要とか、いろいろ言われていますが、これは、二人で一緒に生活することが前提になっています。ところが、離婚するとなると、年金も財産も半分になる一方、生活に必要な経費は、半分になるわけではありません。
特に、突然、離婚請求された側は、予定していた老後の生活が全て崩れ去ってしまいます。
若いときなら、人生をリセットだと頑張れますが、すでに定年、定年間近だと、これから老後資金を増加させることもできません。
どうしても、今ある財産の奪い合いになります。
- 卒婚と熟年離婚、どちらを選べばいいでしょうか?
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互いに対等に話し合えるなら卒婚も選択肢に入ります。
近年は、離婚せず、別居だけする卒婚を選択する夫婦も増えてきました。離婚なら、財産分与は、実質的共有財産についてのみ1/2、相続なら一律1/2、年金分割なら婚姻期間の1/2、遺族年金なら一律3/4。数字の上から、卒婚の方が有利です。
ただ、どうしても、妻が夫に、生活費を貰う、という形になります。また、実質的夫婦共有財産とはいえ、妻が夫名義の預金を使わせてもらったり、夫名義の家に住まわせてもらったりという形になります。
夫婦間が対等な関係なら、この形式でも、お互い、夫婦共有財産だから、当然と考えることができます。卒婚の選択には合理性があります。
しかし、夫が昭和的思考で、夫婦関係に上下関係があるときは、食わせてやってる、財産を使わせてやってるという意識が続き、別居してもモラハラはやみません。この場合は、選択肢は、卒婚ではなく、離婚です。
- 卒婚する場合、夫婦間で契約書を作成すべきでしょうか?
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契約書を作成すべき場合とそうでない場合があります。
卒婚といっいても、いろいろな形があります。一緒にいると喧嘩するけど距離を置くと円満になれるというなら、あえて書面を交わす必要はないですしょう。
しかし、微妙な関係の時は、取り決めをしておいたほうがいいかもしれません。生活費の支給、互いの扶助協力義務、貞操義務、どこまで権利義務として構成するか検討し、書面化する必要があります。